平成二十六年の俳句
  

姪泣かす手加減なしの歌留多かな

おでん酒フランス人の便りあり

日脚伸ぶ踵を返し前向きに

特別の春を感じる茶托かな

春浅しタルトタタンの出来具合

蕗味噌か天麩羅するか口論に

葉に隠れ恥じらうように椿咲く

大雪にたくわん三つ残りけり

鳥は飛ぶ人は地を這う残鴨

雨やみし曇天流れ春なりし

花曇この頃逝きし人想ふ

花を賞でその時惜しく撮り収む

苺の花浮かべ小さな九谷焼

柿若葉から始まりし柿の季語

花好きは薊の棘は気にならず

茶を点てる八十八夜近づきし

千二百年の悠久遍路往く

行く春の姿を池に映しけり

犬連れて同行二人遍路行く

たっぷりと月見草咲く散歩道

網戸から夜風を入れて酒を呑む

あめんぼう水に四つの影作る

妖精の香り泰山木の花

一日は楽しく終わりさくらんぼ

新緑や讃岐おもろい山ばかり

薫風と共に駆けゆく子供かな

溜池にさざ波与ふ薫風か

航跡を西日に残す飛行機雲

一年の月明かり浴び月見草

たおやかに色気ありしや合歓の花

ゆらゆらと蓮揺らしたる池の鯉

夏萩も百日紅もまた白が良し

東京の新たな出会い晩夏かな

入れ物がない建水で飼う金魚

夕焼けや手品のように空染める

鳴きすぎて故に短し蝉の命

小さくも背びれ尾びれに金魚の美

天に問う死の葛藤を蝉時雨

夕凪や赤灯台のところまで

朝刊に朝顔朝の顔とあり

名も顔も忘れちまって盆に会う

掬月亭月を背中に香を聞く

掬いたくとも掬えぬや池の月

和船ゆく乱れる月の水面かな

虫はオケ月が主役のオペラかな

秋の蝶庭を梳きゆく風の中

案山子には人格はなし平和かな

見上げれば憂いは消えて天高し

虫の音や姿勢をくずし酒を呑む

曼珠沙華白の球根手にはいり

三日月やドキドキ癒やす白鵬戦

窓開けて突如聞こえし虫の声

てんとう虫粋でおしゃれな羽で飛ぶ

秋刀魚買う晩酌の酒待ち遠し

特大と書かれておりし秋刀魚かな

骨残る秋刀魚二匹の命果つ

秋風や音立て去りしカサカサと

たまたまの良き配置なり庭紅葉

秋刀魚から料理談義の始まりし

台風のそこで曲がるは気ままなり

エルメスのスカーフ巻いて街を行く

晩秋の漁港真上にトンビ飛ぶ

小銭入れ無くし心に木枯らしや

風の意に添いて舞いしか落葉なり

シンフォニー指揮者の額冬の汗

木枯しよ吹け志よ舞い上がれ

鴨の群れ雌一匹に雄二匹

水面には紅葉の歪み映しをり

枯尾花穂を整えてまだ老いず

具象より池の紅葉の歪みかな

広き庭奥に紅葉を配しをり

各々の心に映す紅葉かな

撮る位置を決めて三脚紅葉かな

和船降り名残の紅葉名残惜し

絶景や屋島北嶺冬を吸う

冬の蝶また冬の蝶径行く

消えかけし記憶の径落葉踏む

山からの眺め紅葉と海の青

鳥の声色々聞こえ冬径

カサカサと紅葉踏み分け径行く

木漏れ日を受けし落葉のうず高く

北風や上を向けずに下を向く

一杯のラーメン気合冬に勝つ

笑う日を待ちわびてをり山眠る

小春日にくっきり見える小豆島

焼き上げた餅の形はアートなり

白下糖十年の時餅につけ

色々な食べ方ありし餅文化

国境山はゴツゴツ眠りおり