平成二十四年の俳句
  

蕗の薹またあえましたニッコリと

しきたりは家それぞれに斑雪

なんとなく春の雰囲気帯びた空

この国の行く末如何に紀元節

飯山ほど笑い上手の山はなし

立春や昨日と違う丘の景

萩を刈る庭師のいらぬ狭庭かな

少しずつ色を纏ひし丘の梅

朧月闇夜に浮かぶ海月かな

花見には父母連れてちらし寿司

暗譜する営み長し春めきし

大笑ひする頃近し山笑ふ

天和を春雷のごと母上がる

柔らかな心の芽吹く日永かな

吾と疎水思索を共に若葉風

新緑や庭に作為と不作為と

ある昔父が作りし柏餅

蕗料理姪は大人の味といふ

鯖の背に海の青きのうねりかな

薫風を裂くかのようにバット振る

豌豆を箸で掴んで日本人

栗の花神社の森に浮かぶ月

川隔て向こうに蛍こちら人

主婦たかる胡瓜一本二十円

近所にも知らぬ道あり青田風

種と茎別れる定めさくらんぼ

梅雨に入り庭の茂りの滋味となる

新聞に包まる胡瓜ありがとう

山川の味は鮎なりあまごなり

渡月橋渡りしところわらび餅

カシューナッツ食べる勾玉生ビール

夕焼けにまぬけほがらかロバのパン

三越の裏通りにも秋の風

夕立に会わぬと自称晴れ男

楽団は狭庭にをりし虫の声

月に能薪の火の粉も舞をりし

作り手の手間など知らず栗旨し

ひと夜毎ふくらみそして十三夜

秋に映え秋を謳歌す芒かな

新米の美味は天下に無双なり

枯萩の中に咲きそむ白椿

銀杏の弾ける音に閃きし

街路樹の落葉踏みしめ黙考す

小春日に学び舎包む五剣山

もらいすぎみかんだらけの冷蔵庫

着膨れてもとから太いと言われけり

美味かりしおせち段取るつまみ食い