平成二十二年の俳句
  

初場所や拍手の沸きし右上手  

もち花や床に明るさちりばめて 

冬帝や避けて通れぬものばかり

四十一性格頑固山笑ふ  

早春や友は少々笑いすぎ

玄関に明るさ宿す雛飾

梅の花散りて狭庭を染めあげし

たらの芽や山の風味は酒の友 

雛飾ちょっと音痴な女の子

花曇遺骨は母に抱かれをり

千の風友唱和して鳥帰る 

坂道を濡らしてゆきし小糠雨

茶摘女の手先に宿るリズムかな

春キャベツごろんと落ちて他人の目

見つめるとこわれそうなり桜貝

蛍火やピアニッシモの命かな

ほうたるに授ける闇の息づかい

鼻唄のメロディーふわり風薫る

恐るるに足らず青々栗の棘 

雰囲気は昭和のままのラムネ瓶 

青田から泥の足跡ひとり分 

★ 風見つけ風にこたえる風車

万緑の稜線眺む丘の上

水打や腰の引けてる娘さん

炎天や空気を焦がし人焦がす

昔から祭りは嫌ひ人嫌ひ

数々の追憶光る手花火に

太陽の苦味成分ゴーヤなり

新米にまさる艶なし旨さなし

長き夜に付き合う術は読書なり

秋の日に歳時記繰りて句帳果つ

虫の声指揮をとるのはどの声か

鰯雲正義を論ず本を読む 

法師蝉時に輪唱奏でをり

天高しそうありたしや志

金木犀思い出多し道後の湯

松山をはなれいくとせ曼珠沙華

鍵盤に緊張乗せて冬めきし

力なく鎌ふりかざす冬蟷螂 

茸取り山の入口知る自慢 

紅葉の山を背にするたこ焼き屋

口笛のかきけされをり北風に

電飾の風に揺られしクリスマス

小春日やせがみ駄々こね肩車