平成二十年の俳句

初詣猫一匹のトタン屋根 

雪降りて庭の熊笹映えにけり

深酔ひし夜風に当たり春の立つ 

人命を山のものとす雪崩かな

妖精もまじりて散りし花吹雪

★ 枇杷が好き色も形も味も好き

極上の酒でいただく鯵一匹

生き方はそれぞれありし蝸牛

★ 夕焼けや今が刻々沈みゆく

一番に出たすすきの穂背の高し

萩の花まずはチロロと咲きにけり

無月の夜天に悪意はなかりけり

カーテンを閉じて夜長の終りけり

夕焼けのはるか向こうにユーラシア

野良仕事嫗の笑顔曼珠沙華 

むなしさはどこからくるや虫の声

まだ惑う不惑の齢月仰ぐ

小窓から見る街角の暮の秋

★ うら道を知りたる散歩石蕗の花

天空に小窓をあけし冬の月

帰り道犬に吼えられ時雨るや

★ ふるさとの山高くして山眠る

遠景の我を遠ざけ冬の海 

餅花や一粒ごとにしだれをり

新年や何も変わらず変えずかな