平成十八年の俳句

初空や人を小馬鹿に鴉鳴く

鐘撞けば初空音に染まるかな 

寄鍋やのちは動く気なかりけり 

立春や語らる虚子の昔話

落椿刹那を我に見せしかな

落椿畳に落ちて音となる

春めくや零時を過ぎて酒を飲む

湯上がりの体に触れる春の夜

朧月我の形もおぼろなり

我が庭の梅を気に入る鳥多し

春雷や響きはどこか柔らかく

産土や夜となりけり春の雨

揚羽蝶自分の意志より風の意志

★うどん屋の列に加わり団扇かな

★うどん屋の道をたずねし半夏生 

海開き泳げぬものにコカコーラ

★青葱の一つとびちり夏座敷

夏空にものほし竿の残りけり

玄関を開けると蝉の世界かな

夏の夜に少年一人球を蹴る

涼しさやピアノ奏でる調律師

投票に行かぬと決めてサングラス

小惑星如きジャガイモ皿の上

揺るる萩揺れぬ刹那もありにけり

本堂の隠れるほどに萩の花 

えのころ草旅行終わりてほっとせり

小面の心に添ひし虫の声 

さつま芋胸につかえし美味さかな 

剣山頂高し天高し

熊笹を伝ふ秋風剣山 

神などは居ろふはずなし神迎ふ

楽章の合い間咳き込む静寂かな

はさかりし歯と歯の間葱薬味

★暗算の答えそれぞれ暮早し

瓢の笛知り俳人となった気に

戦死戦死…外は時雨し無言館