平成十七年の俳句

お年玉猫に小判か姪二歳

★ 熊笹の二株買ふて梅一輪 

一年のまためぐりたる梅一輪

啓蟄となれども我はうごめかず

★ 雛壇に烏帽子ずれたる者一人

茹で汁に春色与ふアスパラガス

散り落ちた梅の花びら庭を染む

つくしんぼ袴取りにも得手不得手

蓬摘みだんだん無口になりにけり

四月馬鹿ためしに一つやってみる

風光る指の先よりドビュッシー

ピアノ弾く合間に新茶入れらるる

パソコンのマウスカチカチ熱帯夜

歴史とは共有できぬ百日紅

逃げるのがまことにうまし小蠅かな

夏の夜静かに寝入るトロイメライ

かわいいと母に好かれし青蛙

億万の夢のつぶてや天の川

この夜は狭庭の虫よカンタービレ

狭庭から眺む名月広き宇宙

渓流を見下ろす吾と曼珠沙華

土地の人慣れた運転曼珠沙華

虫も花も団子もそろたあとは月

国道に単線添ひし曼珠沙華

★ 日本海見下ろす坂に槿あり

この径足元白きお茶の花

ピアノからぽろんと小春の音色かな

西のほう冬の三日月ファンタジー

★ 着膨れて楽譜を買ひに街に出る