平成十六年の俳句

なるほどな二人頷く春隣  

ぼてぼてとどたま突っこむ冬の蓮 

春暁やアールグレイの香り立つ 

★ 天空の高さを知るや凍てし月  

ハルウララ我が身をうつす負けっぷり 

利休忌の菜花は影を落としをり  

理屈など意味無きものに春の雨 

★ 建物の形やわらか春の雨 

暗闇の窓となりぬや春の月  

青鷺や背筋を伸ばし何もせず 

★ 春雨やその音だけの宵の口 

逃げもせで挑発的な小蠅かな 

朧月背に感ずまゝ歩きをり 

晩餐の灯りとなるや春の窓 

恋猫や静寂の声となりにけり  

一本の鯖の背海の色深し  

★ 豌豆や椀にてつやを競ひをり  

蜘蛛の囲に大きな獲物我の顔 

梅雨の入りお堀の水輪時を織る 

鈴虫の螺鈿鳴くごと光りをり 

夏帽子横断歩道ジャンケンポン 

玄関を入ひりて右に金魚鉢 

赤とんぼバトミントンの羽は屋根 

一点で羽をせわしく赤とんぼ 

童謡の風にそよぐや赤とんぼ  

 郷愁はそこに飛びをり赤とんぼ 

★ 仲秋や後部座席の一升瓶 

仲秋の深くなりゆく湯浴みかな 

雨月とは憂いを賞でる心かな 

道ふさぎ徐行を強ひる秋祭 

鐘の音は青空に果つ秋祭 

在りしことそれは知ること知りし秋 

小春日にシンコペーションフォルテッシモ 

その音に会話途切れし落椿 

目標は目安となりぬ去年今年 

初富士は片岡球子広告欄