平成十五年の俳句

凍てし夜の闇に薬の封を切る 

★ 独楽の軸ぢっと見つむる子供の眼 

笑初めそして泣初め忙し子 

探し見るえくぼはどこか山笑ふ 

足をやゝひらきて青き踏みにけり 

夏帽子深めにかぶる通学子 

沢の音小雨の闇に河鹿聞く 

やわらかな色の移ろひ菖蒲園 

壽の萬年亀と花菖蒲 

★ 潰れし蚊行間の時二十余年 

★ 野分あと空はミケランジェロの作 

★ ひし形の口は母待つ燕の子 

べらの色母嫌がると父が言ふ 

鵲の橋をめぐなよはたた神 

梅雨の音部屋は地上の底となる 

足元に気付く明るさ月見草 

水羊羹大小見極む審比眼 

屈託のなき顔ならぶひまわりや  

泳ぎ終へ入日を眺む親子かな 

面打ちに赤色晒す西瓜かな  

枝豆のみどり賞でつゝむきにけり 

★ 濃き陰を更に濃くする蝉時雨 

枝豆にのびる手丁々発止かな 

此の時をはかなく在りし白露かな 

石塀の径ゆるりと秋めくや 

★ 美形なる坊主読経百日紅 

手にもつはすすきえのころ力草 

★ 軽トラの荷台に子等の祭かな 

★ 登窯伊部の秋をくぐりけり 

月の夜に一人居眠る待合室 

小春日に雀十匹また一匹 

偏りし又偏りし年暮るる 

今日の星おまえにゆうたきれいだぞ