むき栗を一つほおばり乗り初める
大皿の椿に見入る縁かな
食った気のせぬかさよりの刺身かな
蕾見て早や花散るを気にしをり
去る前に一言いへよかいつぶり
花水木植えし道路の開通す
蝦蛄の首刎ねる鋏の酷きかな
目に映る新樹の山に向かひけり
もんしろてふ二階の高さで添ひて舞ふ
眠れぬ夜だまれ蛙の大合唱
道をしへ迷へる道ををしへけり
池辺に花火散らかしガキの跡
蚊を逃し殺生せずや掌
短命を訴へてをり蝉時雨
秋の風時の流れに違ひあり
不思議とはこれぞギアナの滝落つる
★ 終わりたる花火去る人残る人
秋めくやインクの香り句を留む
ふと気付く秒針見つむ秋の時
★ 墓参りしてきた母の声の張り
しゃっくりを止める術あり虫時雨
去年から捨てずにをりし吾亦紅
夕方に見る朝顔に力なし
★ 万物の色を変へたる初嵐
汗かひてをりし試着はできぬかな
戸を開けし虫の音はこぶ夜風かな
キーボード孤独に響く夜長かな
蜜柑食む句会を記す紙一枚
仲秋や夕雲赫くちぎれをり
君賞でし虹を我見ず夜の齟齬
異星から見降ろす夜景秋の旅
★ 如庵にて時は過ぎゆく法師蝉
★ 月賞でよさすればこの世浄土なり
水面には仰ぎし月の落ちてをり
リーチ棒河に投げ込む虫の声
知られざる月の名所や其処の池
★ 闇に置く我の位置在り月仰ぐ
ぐい呑みに浮かびし月を飲み干せり
松虫の声は遠くに及ぶかな
招かれし茶室の暗さ杜鵑草
秋の蚊に刺されし予感正しけり
あいうえお柿食ふ至福ドレミかな
捕えたる蟷螂鎌をふりかざす
ベンガラの壁から香る諸味かな
澄み渡る閑けさ秋の声聞こゆ
ものの色ものの音とも秋の暮
ぬかばえや視野のノイズとなりにけり
★ 凩の音に新聞届く音
痩せし今脂肪の衣脱ぐ寒さ
口あけて医者をみつむ年の暮
置き物の恋猫キスをしてをりぬ
子供には鯉しか見へぬ紅葉狩
分からぬ語辞書にもあらず冬日和
ポリーニの十指鍵盤狩る如し
面白く分からぬ科学冬篭
なにげなく蜘蛛を殺生残る悔ひ
冬の蚊を打ち損じたるとろさかな
鼻毛抜くその白き見る冬の夜
救急車淋しく響く年の暮
今をらぬ猫の思い出漱石忌
嫌ひと言ふ母が海鼠を食ひにけり
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