平成十三年の俳句

 道しるべなき三叉路の小春かな 

夜の梅紅はことさら闇を濃く 

夜の梅見目も香るも微かなり 

髭剃らぬ己の体と梅の色 

内海を架ける大橋つばくらめ 

つばくらめ夕陽を背なに紫雲山 

夢桜ひょいと名所に迷ひけり 

散りおちた椿手に置き眺めけり 

新緑の山に埋もれるダムありき 

つばくらめとかく無心に遊びをり 

モスクワの曲を奏でし薄暑なり 

池赫く染めし夕日につばくらめ 

目の前のトンビ涼しく海に消ゆ 

安らかに時の流るゝ田植かな 

そうめんにこだわりありしつくらせぬ 

雲の峰映せし池を走りけり 

夏の月赫き火星を従えり 

一本のまゝで食ふべし胡瓜かな 

一票を投じる時の涼しさよ 

行きは山帰りは海の夏景色 

蓮池の下に仏の眠る寺  

コテージのベランダに立ち海を見ゆ  

草いきれのぼると池のひろがりし 

星一つ二つ数へる秋夜かな  

塀の上猫見かけたる今朝の秋  

茎石に僕がなろふと申し出る 

役満がなぜかあがれぬ夜長かな 

冬帝に負けぬ心が我にあり