ベーゼンドルファーのほろ苦い思い出 

 サンポート高松でピアノ開きのリレーコンサートがあった。ピアノはヤマハ、スタインウェイ、ベーゼンドルファーのどれかを選ぶことができる。友達であり先生であるTさんに相談すると、ベーゼンドルファーやってみたらいいじゃん、とのこと。このピアノを選ぶのはどうやらシブいらしい。

そして当日。僕の目の前にベーゼンドルファーがある。僕が今日のために練習した曲はエルガーの「愛の挨拶」。出だしでいきなり、そぐる。ベーゼンドルファーは鍵盤が重くて、いつもの調子で弾けない。もう一回最初から弾いてみるも、途中で完奏を断念。大ホールの大舞台で大恥をかいた。舞台を去って、観客席に戻るところで、見知らぬ人から「あなたの演奏に何か勇気をいただきました」と慰めの言葉をかけてくださるも「あ〜あ、やってしまった」との思いが頭をぐるぐる駆け回る。今日デイケアから演奏を聴きに来てくれたみんなとラーメンポートに行く途中、「もう絶対大舞台で演奏するのはヤメだ」と僕が嘆いていると「そんな風に学習したらいかん」とTさん。さすが元教職者、模範的反応。そのTさんがいやみを言う。「今日はラーメンが目的」「がくっ」。でも、今日は今日、またつぎ挑戦しようなんて気持ちになってくるから僕は奇妙だ。


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